福岡家庭裁判所小倉支部 昭和50年(少)141号 決定
少年 M・T(昭三五・一〇・二〇生)
主文
少年を初等少年院に送致する。
理由
(非行事実)
少年は、
第一、別紙(一)窃盗犯罪事実一覧表記載のとおり、単独で又は共犯者欄記載の者と共謀のうえ、他人の財物を窃取した
第二、別紙(二)窃盗未遂犯罪事実一覧表記載のとおり、単独で又は共犯者欄記載の者と共謀のうえ、他人の財物を窃取しようとしたが、その目的を遂げなかつた
第三、公安委員会の運転免許を受けないで、昭和五〇年一月二八日午前三時過ぎ頃、北九州市八幡西区○○町×番○○化成○○工場○○事務所付近道路において、普通乗用自動車(北九州×○××××号)を運転した
ものである。
(適用法条)
第一の別紙(一)窃盗犯罪事実一覧表の番号一ないし二〇の各事実につき刑法二三五条、同一覧表の番号二一ないし三三の各事実につき同法六〇条、二三五条。
第二の別紙(二)窃盗未遂犯罪事実一覧表の番号一、二の各事実につき同法二四三条、二三五条、同一覧表の番号三の事実につき同法六〇条、二四三条、二三五条。
第三の事実につき道路交通法六四条、一一八条一項一号。
(初等少年院に送致する理由)
一、少年は中学一年の夏休み頃(昭和四八年頃)既に初発非行(窃盗)があり、その後もたびたび家出をしては窃盗等の非行を繰返す等の非行がおさまらず、昭和五〇年二月一九日教護院である○○学院に入所の措置をとられたが、同学院に入所後も再度にわたり無断外出をしては窃盗等の非行を犯しているものであつて、少年の非行は既に質的にも量的にも相当に進行していることが認められる。
二、鑑別結果通知書によれば、少年の知能は普通知であつて(新制田中B式I、Q九六)、特に問題は認められない。その性格は抑制力がなく、衝動的に欲求のおもむくままに行動する傾向がある。
三、少年の家庭には、大工職人をしている実父と、クラブのホステスをしている実母とがおり、実父は少年が非行を犯すと体罰を加える程厳格な面もあるが、仕事の関係で泊りがけの仕事もあつて不在がちであり、実母はホステスとして夜の勤務であるため、両親ともに家庭には不在がちであつて、保護者の充分な監護能力は期待することができない。また○○学院に入所後もその教護に服せず、再度にわたり無断外出をしては窃盗等の非行を犯している点からみても、最早在宅ないし一般教護院での処遇はその限界にあるものといわねばならない。
四、以上の次第であつて、このまま少年を放置すると、少年が再び家出、無断外出等を繰返して非行を犯す虞れは極めて強い。また家出無断外出等を繰返しては窃盗等の非行を犯し、窃取した金を主に享楽面に使用するといつた安易な思考と行動が習癖化してしまつている少年には、少年自身に対する矯正教育が必要である。よつてこの際少年を施設に収容したうえ、専門的な指導のもとで、健全な生活態度を習得させるとともに、その性格の矯正を図るのが相当であると判断する。
五、なお昭和五〇年少第一〇一二号の虞犯事件(編注・参考審判に付すべき事由参照)については、怠学或は窃盗の目的で通告書記載の各所を徘徊した等の虞犯事由は認められるが、虞犯を基盤として他に犯罪が成立している場合には、その成立した犯罪の中の要保護性の資料の一つとしてこれを判断すれば足りると解するので、上記虞犯については独立には処分の対象としない。
よつて少年法二四条一項三号を適用して主文のとおり決定する。
(裁判官 佐藤敏夫)
〔別紙(一)〕 窃盗犯罪事実一覧表
番号
共犯者
犯行年月日
(昭和年・月・日頃)
犯行場所
被害者
被害品
品名
数量
時価(円位)
1
-
四九・一一・二二
北九州市八幡西区○○×丁目××-×○○勝商店
○金○美
現金
三、〇〇〇
2
-
四九・一二・一四
北九州市八幡西区○○○×丁目○○○○スタンド前駐車場(駐車中の自動車内)
○田○司
普通預金通帳
総合口座通帳
一冊
一〃
3
-
四九・一二・一四
北九州市八幡西区○○○×丁目××-×× ○○○○事務所
○本○昭
現金
一、〇〇〇
4
-
四九・一二・一四
北九州市八幡西区○○×丁目××-× ○辺○男方
○辺○男
現金
五〇〇
5
-
四九・一二・一四
北九州市八幡西区○○×丁目××-× ○上○俊方
○上○俊
綿ジャンパー
一着
二、〇〇〇
6
-
四九・一二・一五
北九州市八幡西区○○×丁目××-×理容○○○店
○好○子
現金
財布
一個
一、五〇〇
一、〇〇〇
7
-
四九・一二・二七
北九州市八幡西区○○×丁目××─× ○田○樹方
○田○樹
現金
六、五〇〇〇
8
-
四九・一二・三〇
北九州市八幡西区○○×丁目××番×号 ○○小学校北側路上(路上でのひつたくり窃取)
○西○子
現金
ガマ口
鍵
印鑑
一〃
一〃
一〃
一四、〇〇〇
五〇〇
9
-
五〇・一・一
北九州市八幡西区○○×丁目××-×× ○上○行方
○上○行
現金
鍵
四〃
二〇〇
10
-
五〇・一・二
北九州市八幡西区○○町×-××
○本○治
現金
腕時計
財布
一〃
一〃
四七、〇〇〇
二〇、〇〇〇
二、〇〇〇
11
-
五〇・一・五
北九州市八幡西区○○×丁目××-×× ○上○行方
○上○行
現金
ショルダーバック
一〃
二、〇〇〇
二、〇〇〇
12
-
五〇・一・六
北九州市八幡西区○○×丁目××-×× ○川○行方
○川○行
現金
一二一、〇〇〇
13
-
五〇・一・一〇
北九州市八幡西区○○×丁目××-×× ○崎○方
○崎○
現金
革手袋
ショルダーバック
サファリーコート
一双
一個
一着
九五、三〇〇
二、五〇〇
二、五〇〇
五、〇〇〇
14
-
五〇・一・一二
北九州市八幡西区○○×丁目×-×○○産業株式会社事務室
○池○公
カウンター機
一台
四、〇〇〇
15
-
五〇・一・一八
北九州市八幡西区○○町××-××○本○代○方
○本○代
現金
セカンドバッグ
一個
二三〇、三七四
五〇〇
16
-
五〇・一・二四
北九州市八幡西区○○○×-×× ○生○市方
○生○市
現金
九〇〇
17
-
五〇・一・二四
北九州市八幡西区○○×丁目 ○○劇場
○田○子
現金
財布
定期券
一個
三通
五、〇〇〇
一、三〇〇
18
-
五〇・一・二六
北九州市八幡西区○○×丁目×-××-××× 一階自転車置場
○下○彦
自転車
一台
二五、〇〇〇
19
-
五〇・一・二七
北九州市八幡西区○○町×-××○岡○方
○岡○
現金
がまロ
一個
三、〇〇〇
五〇〇
20
-
五〇・一・二八
北九州市八幡西区○○×丁目 ○田方前路上
○籠○幸
普通乗用自動車(北九州五せ六一六一号)
一台
三〇、〇〇〇
21
A
五〇・五・一二
福岡県福岡市内の道路上に駐車中の貨物自動車内
不詳
現金
小銭入れ
一個
一、〇〇〇
一〇〇
22
同 上
五〇・五・一二
福岡県福岡市内の菓子店内
不詳
現金
五、五〇〇
23
同 上
五〇・五・一四
北九州市戸畑区○○○町 ○○○旅館内
○森○義
現金
六、〇〇〇
24
同 上
五〇・五・一四
下関市○○町×丁目×番×号 ○○○下関ショッピングデパート二階紳士服売場
○本○雄
ズボン
カッターシャツ
二枚
一〃
三、九六〇
二、三〇〇
25
同 上
五〇・五・一四
山口県下関市内の路上に駐車中の単車上
不詳
鞄
一個
五〇〇
26
同上
五〇・五・一五
下関市○○町×番×号○○町会館一号○田○浩方
○田○浩
カメラ
めざまし時計
ベビー布団
毛布
ベビー毛布
ジャンパー
一台
一個
一枚
一〃
一〃
一〃
五、〇〇〇
三、〇〇〇
二、〇〇〇
三、〇〇〇
三、〇〇〇
四、〇〇〇
27
同 上
五〇・五・一六
下関市○○町××-×× ○寿○行方
○寿○行
鍵
トランジスターラジオ
一個
一台
四、〇〇〇
28
同 上
五〇・五・一六
山口県下関市内の二階建の民家
不詳
現金
みかんのかん詰
パイナップルのかん詰
かん切り
ホーク
一個
一〃
一〃
二本
二、〇〇〇
二〇〇
二〇〇
一〇〇
二〇〇
29
同 上
五〇・五・一六
下関市○○町×番××号○○宿舎
○花○方
○花○
現金
鞄
ライター
一個
一〃
一八、三四〇
五〇〇
四、〇〇〇
30
同 上
五〇・五・一八
宇部市○○×××番地 ○井○治方
○井○治
外一名
現金
腕時計
財布
煙草
一〃
一〃
一〃
三〇
一五、〇〇〇
二〇〇
一〇〇
31
同 上
五〇・五・一八
宇部市○○区○○○ ○国○方
○国○
現金
腕時計
一〃
三〇〇
一五、〇〇〇
32
同 上
五〇・五・一八
宇部市○○×××の× ○隅○孝方
○隅○孝
現金
メタル
カセットコーダー
ショルダーバッグ
旅行用鞄
一〃
一〃
一〃
一〃
一五、六〇〇
二四、〇〇〇
二三、〇〇〇
三、〇〇〇
三、〇〇〇
33
同 上
五〇・五・一九
下関市○○町○○ ホテル○○×××号室
○上○ク○
ファンタ
ミリンダ
二本
二〃
一〇〇
一〇〇
〔別紙(二)〕
窃盗未遂犯罪事実一覧表
番号
共犯者
犯行年月日
(昭和年月日頃)
犯行場所
被害者
未遂の態度
1
-
五〇・一・一三
北九州市八幡西区○○町××─×美容院経営 ○沢○子方
○沢 ○子
被害者の店内において、金品を窃取しようとして、装飾棚、書類収納庫の中を物色したが、金品を発見するに至らず未遂に終つた。
2
-
五〇・一・一六
北九州市八幡西区○○×丁目××-××○尾○久方
○尾 ○久
被害者方の室内において、金品を窃取しようとして、整理箪笥、洋服箪笥の引出し内を物色したが、家人に発見されて未遂に終つた。
3
A
五〇・五・一八
宇部市○○区○○○○谷○モ○方
○谷○モ○
被害者方の室内において、金品を窃取しようとして、箪笥の引出し内等を物色したが、金品を発見するに至らず未遂に終つた。
参考
審判に付すべき事由
一、昭和五〇年四月一一日午前八時一五分頃○○学園を無断退去、午前八時三〇分頃筑紫郡○○○町○○バス停付近の飲食店(○脇さん)より七〇、〇〇〇円、小切手三枚、化粧道具入りの黒皮鞄を窃取、七〇、〇〇〇円、小切手三枚を抜き取り、鞄は付近の空家に捨て、○○駅行バスに乗り、途中福岡市○○にて下車、時計一ヶ(一四、〇〇〇)ズボン一枚(三、五〇〇円)、カッター一枚(一、二〇〇円)を購入、再び○○駅行バスに乗り○○駅に行き、○○駅より○○駅まで乗り、昼間○○町付近を徘徊し、夜は家の近くの空家に寝る。
昭和五〇年四月一四日○○○公園で小学生二、三年位の子供と知り合い、その子供の家が、カーペット、ジュータン等の表具店だつたので就職を頼んだところ、主人が本児を家に連れて行き車から降りて玄関でノックしている間に逃げる。